10時―


「よう、時間通りだな」

「時間通りじゃねーよ、なんだよ、突然見合いだなんて!しかも婚約者だって!?」

俺は親父の隣に座った。黒塗りのハイヤーはゆっくりと進み出す

「桐蔭の奴とはな、アメリカの大学で一緒になってな…うちは男ばかりだったけど、やっとあっちに女の子が生まれたから約束したんだよ。」

「それが俺かよ…」

「あの娘はいい子だぞ〜!しばらく病気だったが、すっかり元気になったしな」

「って、何で今まで何も言わなかったんだよ!」

「サプライズサプライズ!」

サプライズじゃねーよ…

「俺、好きな奴できたんだけど…」

「何言ってるんだ!今から見合いだぞ?俺の目に間違いないんだから、信じて見合いを受けろ!おまえが気に入るお嬢さんだぞ」

「じゃあ親父が見合いしろよ」

「…カッカッカッ。俺を信じろ」

はぁ…ため息がでた

親父は意地でも親友の娘と息子を結婚させる気だ…

俺だって小田切に会ってなければ、ここまで嫌じゃなかった…

でも、会ってしまった

どんな理由であれ、会って好きになってしまった…

もう戻れない…

その人を想えない