「......愛されたかった......愛されたかったのよ!!」
静寂の中に姫野の叫びが響きわたる
「.....ううっ....グス......愛されたことのある人には分からないわ....っっ....
.....私のっ....苦しみなんて......」
「.....姫野.....」
弱々しく言う姫野は
いつもの強さがなくて.....
俺はただ名前を呼ぶことしかできなかった。
姫野は過去に何かあったのかもしれない.....
それが何かは分からないけど
「みんな....ごめんなさいっ.....」
立ちあがってみんなに頭を下げる姫野。
その姿を見た人は
もう姫野を責めることはしなかった。
そしてそのままつばきの前に行き、
「桜井さん...本当にごめんなさい...っ..」
深く深く頭を下げた。
その後、
もちろんあの男達4人とR高の女子たちにもちゃんと謝罪し、
カップル4組は誰も別れることなく終わった。
まぁ男達はこっぴどく怒られたみたいだけどな。
もう浮気なんてできないだろう。
その日の校内は姫野の話とつばきの話で持ちきりだった。
つばきのもとに謝りに来る人や友達になりたいと言う人が訪れ、
俺のところにも謝りに来る人がいた。
そんな騒動があった次の日
姫野桃華は自主退学をした。
一件落着
と思うけどつばきはそうは思わないみたいだ。
「直紀くん....私ね.....」
「ん?」
「───姫野さんといつか...友達になりたいな....」
そう言うつばきはどうしてそんなに優しいのだろうか....
そんなつばきが
好きなんだけど。
「.....そーだな。次に会ったら....俺も友達になろうかな」
なんとなく
次に会ったときは姫野のことを友達として
好きになれそうな気がする....
“愛されたかった”
お前を愛してくれる人はたくさんいたと思うぜ?
きっとこれからも愛してくれる人と出会うから
幸せになれよ──
【桃華side】
私は両親は愛をくれない。
父が愛すのは私の体
母が愛すのは私の顔
じゃあ私自身を愛する人は....?
保育園にいたころから、みんなに可愛い可愛いと褒められて、
両親も可愛い可愛いとひたすら言っていた。
そんな汚れも知らない無知な自分はただ幸せだと感じていた。
でも
私はあることを知ったの。
保育園に通うときから一人部屋で寝ていた私。
小学4年生のころ
夜中に急に父が入ってきた。
「桃華.....」
「......ん....パパぁ?」
「桃華....桃華.....」
「...どうしたの?パパ」
「桃華.....パパは桃華が大好きだよ」
「桃華もパパ大好き!」
「そーかそーか....」
ニヤニヤと近寄ってきた父
ベットに入ってくるなり私のパジャマのボタンに手をかけた。
「ぱ、パパ.....?なにしてるの?」
あのとき...
父は父では無かった。
ただの
1人のおじさん....
全身に鳥肌が立ったのを今でも覚えている...
「桃華あ....」
「......ゃ....だ.....」
「大丈夫だよ桃華....優しくしてあげるから.....」
「....やめて....パパ....やめて!!」
ハァハァと荒い息づかいで体を撫でる父に必死に抵抗した。
そのとき父がしようとしていたことは子どもだった私でも何だか分かっていた。
「助けてっ...助けてっ....」
「...ハァ...桃華ぁ.....ハァ...」
「....助けてぇ....助けて....
──ママぁぁぁぁ!!!」
──────
「桃華、また来るからな♪」
パタン──
「.....っつ....ママ....ぅっ....ヒック....」
家にいるはずの母は...
助けに来ることは無かった。
その日から毎晩のように血の繋がった父に抱かれ、
次第に反抗する気も失せてしまった。
そんな生活が3年....
中学2年生になった私は急に母から化粧をされて
ある建物へ連れていかれた。
「桃華。あなたはこれからここで働くのよ」
「.....働く.....?何をするの.....」
「ふふっ。行けば分かるわよ」
母から受け継いだ金色の髪を揺らし
建物の中に入ればそこにはたくさん綺麗な人たち。