愛する眠り姫に目覚めのキスを




――

―――――



詩音の話は衝撃的だった。



....男が手に入らないからって...


そんなことすんのかよ....






「つばきは姫野が流したって知らないけど、


私は知ってたから、

なるべくつばきとの接触を避けたかった。



でもあのバカが....」




そう言うと詩音は呆れたようにリビングの方を見る。



...?






リビングに行ってみれば



ソファに横たわって気持ちよさそうに寝ている瞬介。






「あんたがバカなこと言ったからこうなったのよっ!」



ドン――




瞬介は詩音に蹴られ、ソファから落とされた。











「い‘’っでぇ....」





瞬介は腰をさすりながら顔を歪める。




.....瞬介....



それは痛いよな....









「あんたも命かけてつばきを守ってよ!?」


「は!?

命かけてって.....何したわけ?」


「あの姫野がつばきに何かしでかすのよ!」




詩音は片手を腰にあて、

もう片手で瞬介を指さしている。




瞬介はよく分かっていないようで



「...え?....

桃華ちゃん...が....?」




キョトンとしている。









そんな瞬介に俺たちは説明した。




話を聞いた瞬介は口をあんぐりと開け

そうとう驚いていた。




無理もないだろう。


瞬介は姫野のこと結構好きだったからな。







「......俺.....そこまで嫌な女初めて見た...」



「私もよ!

自意識過剰過ぎるのよね。


いくらつばきが可愛いからって...」





...ほんとだよ...





でも

俺が元凶なんだ。



つばきに被害が及ばないよう

俺がつばきを守るからな...








その晩。




俺たち3人はつばきを守ることを決意した。











――――――――――




夜中に3人で話し込んだり

トランプをしたりと、

結局朝まで起きていた。





気づいたときにはもう6時だったので

そのまま朝食の準備に取り掛かる。




俺は日本に来てから

母さんが仕事でいなくて1人で食べていたため

まあまあ料理ができるんだけど...







ガンっ―..


ガンっ―..






隣で包丁を使う瞬介が怖い....



ゆで卵を半分にするだけなのに

なぜガンガンと音がするのかは分からない。




でも

テキパキとする詩音のおかげでもうすぐ朝食が出来そうだ。







キィィ――...






部屋の戸が開く音が聞こえた。




...つばきだよな...




ちょっと緊張してきた俺の背中を

詩音がポンと押した。






「行ってきなよ」





優しく微笑む詩音に言われ、


俺は部屋のほうに歩き出す。






キッチンから出れば

キッチンのドアのところに突ったっているつばきがいた。




つばきは俺が来ると思っていなかったみたいで

すごく驚いている。







「つばき、おはよう」


「お、おおおはよっ」




....めっちゃどもってるじゃん...





「ふっ(笑)


あのさ、

ちょっとこっから出ない?」




俺は別荘の外を指さし、

つばきに聞く。





「う、うん」











コクンと頷くつばきを確認して

2人で外に出た。








外に出て

後ろを付いてきたつばきの方を振り向き

速まっていく鼓動を落ち着かせてから口を開いた。








「つばき」



「は、はい...」






...ちゃんと..伝えるんだ....




勇気を振り絞って昨日話しかけてくれたつばきのように

俺も勇気を振り絞って言うよ....
















「―――好きだよ、つばき」









「...え」


驚くつばきに

俺は言葉を続ける。







「小さい頃から、

ずっと好きだった...


イギリスにいても、

何年経っても、

再会してからも、




ずっと...





――――つばきが好きだ」








言葉にしてしまえば

感情が止まらなくなる...





目を見開くつばきを



そっと....腕の中に閉じ込めた。





つばきは思ったよりも

ずっと小さくて華奢で

すっぽりと腕の中に収まった。



そんなつばきは


何よりも可愛くて


何よりも愛しい......





























「....直紀くんっ...」



「.....ん?」




腕の中のつばきが声を出した。





「.......ほんと...?」





そう言うつばきに

俺の気持ちがちゃんと伝わるように

抱きしめる力を強めた。






「....ほんとだよ...」






「.....っっ....ふぅっ.....」




「っ!つばき!?」






ギュッ──





....え...






ただ抱きしめられていたつばきが

俺の背中に手を回した。





















「──......しも.....」






....ん?


“しも”?







抱きしめる力が強すぎて

つばきの声が聞こえづらい。




俺は抱きしめる力を弱めて

そっとつばきの顔を覗く....
















「...私も好きっ───」






涙を流すつばきが見えた途端



聞こえた声...