「んん!ほんとにスコーン美味しいね、こんなお店知ってるなんてなんか意外(笑)」
「よく来てたからなー高校時代は」
「で?そんな話はいいのよ、さっき彼女はいないって言ってたけど、あの人とどうなったのよ?」
ナミがいうあの人とは、もちろんわかっている。そう…あいつだ。
正直にいえば今日渋谷に来たのだって、もしかしたらあいつに会えるかもしれないと思ったから。
あいつとよく歩いた道を、久しぶりに歩きたくなったんだ。
「はあ〜、久しぶりに会って早々、なんでその話題なんだよ。もっと他にもあるだろ?」
「だって…シンはまだ好きなんじゃないの?どうなのよ、実際。わたしと付き合ってる時はあんまり話してくれなかったけど、聞かせてよ、サクラさんの話」
「お前、名前まで覚えてたのかよ?すげーな」
「忘れるわけないでしょ?サクラさんのことが引っかかって、わたしたち終わったじゃない。まさか忘れた?」
ナミがカプチーノを持つ手に力が入った。キュッとマグを掴むその手に込められた想いを、俺が知らないはずはない。
「…はいはいわかったよ。でも何も話すことねーよまじで。例えばなにが知りたいの?」
そういうとナミはようやく顔を明るくし、次々に質問を投げかけてきた。
「んーじゃあ、まずは見た目!美人さんだったの?髪は長かった?背はどのくらい?」
「顔は…美人というより可愛いかな。かなり童顔だから。髪は長いときも短いときもあったけど、茶髪でボブのときが一番似合ってたんじゃね?背は小さくて、たしか153とかだよ。満足?」
「ふむふむ、なるほど可愛い系なわけだ!じゃあ、2人はどうやって出会ったの?」
「出会いは…俺が中3でサクラが高1のとき、ライブハウスで」
そう、薄暗いライブハウスで、サクラを見たとき。胸が高鳴ったのを覚えてる。