「…せつ、どっか行くの?」

ジャケットを着る俺を見て棗は言った。

「おぅ、ちょっと散歩」

「ぇ、じゃ俺も行く!!」

俺のベッドに寝ころんでいた棗はガバッと起き上がった。

--------------------------

「せつー…どこまで行くつもりー?」

「…特に決めてねぇけど」

棗は『え"っ』という顔をしていたけど、俺はそれを軽くスルーして歩く。

「あ!!そーいやぁ…なぁせつ」

「んー?」

いきなり真面目な顔になった棗をみて、昨日のメールのことだと思った。

「ホンットに『あのこと』、みんなに言わねーの?」

…やっぱりだ。

「…あぁ。言わないつもり」

そう言うと、棗はさみしそうな顔をした。

「…あいつらには、俺にいつも通りに接してほしいからさ」

気を使ってほしくないし、と付け加えた。

「お前、ほんとにそれでいーの?」

「…え?」

棗が言った言葉が、俺には理解できなかった。

俺は、誰にも心配してほしくないし、変に優しくしてほしくないから、あえて誰にも言わないのに。