「…せつ、どっか行くの?」
ジャケットを着る俺を見て棗は言った。
「おぅ、ちょっと散歩」
「ぇ、じゃ俺も行く!!」
俺のベッドに寝ころんでいた棗はガバッと起き上がった。
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「せつー…どこまで行くつもりー?」
「…特に決めてねぇけど」
棗は『え"っ』という顔をしていたけど、俺はそれを軽くスルーして歩く。
「あ!!そーいやぁ…なぁせつ」
「んー?」
いきなり真面目な顔になった棗をみて、昨日のメールのことだと思った。
「ホンットに『あのこと』、みんなに言わねーの?」
…やっぱりだ。
「…あぁ。言わないつもり」
そう言うと、棗はさみしそうな顔をした。
「…あいつらには、俺にいつも通りに接してほしいからさ」
気を使ってほしくないし、と付け加えた。
「お前、ほんとにそれでいーの?」
「…え?」
棗が言った言葉が、俺には理解できなかった。
俺は、誰にも心配してほしくないし、変に優しくしてほしくないから、あえて誰にも言わないのに。