「…あれっ?棗、おまえ学校は?」

今は8時過ぎ。これから学校に向かっても遅刻だろう。

「ん??あー…サボり?(笑)」

棗は苦笑いをしながら言った。

「まぁどっちにしろ、午後からは学校行くんだからいーの!」

「言い訳になってねーよ(笑)」

すると棗は、俺にばんそうこうと油性マジックを渡した。

「いつものヨロシク♪」

「あーはいはい」

俺はそれらを受け取って、ばんそうこうに大きく『☆』を描いた。

「はいどーぞ」

「さんきゅー」

棗はばんそうこうを受け取って、左手の親指があった場所にそのばんそうこうを貼った。

『----------

棗は、左手の親指が無い。

いや、『無くなった』の方が正しい。

棗と俺が5歳の頃、俺らの家族みんなで花火をした。

そのときに、棗は自分の持っていた花火で、左手の親指を大やけどした。

すぐ病院に行ったが、切断せざるを得ない状態だったらしい。

----------』

「…せつ、どーかした?そんなぼーっとして」

「ん?…あぁ、なんでもない」

『----------

棗の親指が無くなってから、棗はしばらくふさぎこんでいた。

俺は、いつもの棗に戻って欲しかった。

そんなときに、俺はふと思いついて、ばんそうこうに『☆』を描いてその場所に貼ってあげた。

それからは、それがいつの間にか習慣みたいになっていった。

一週間に一回の、おまじない。

----------』

「よしっ!これでおまじない完了っ!」

棗は俺をみて笑った。