笑ってしまう。

さっきまで、酸欠になりそうなくらい加奈に逢いたかったのに、

こうして彼女の姿を見つけると、どうしようもなく動けなくなる。

思考回路がショート寸前だった。

「まあ、なには、ともあれ、だ」

と、また別の雑誌を手に取り、顔の下半分を隠す形でウィンドウの外――加奈達を見やりながら、悠里は言う。

「現状からわかってもらえると思うけど、要するに、あの北川くんと加奈ちゃんのデートを尾行しようかってわけ。

あ、ちなみに、偶然見つけたんじゃないよ。君のために、僕が二人の動向を調べてたんだから、感謝してくれよ?」

「なにが感謝だ。ただのデバガメのくせに。趣味悪い」

「あらっ、じゃあヨシくんはもう帰る?」

「そんなわけあるかっ」

せっかく来たんだ。こんな、いちにのさんであっさり帰ってたまるか。