ぐうの音も出ない僕はちらりとウィンドウの外を見た。

加奈と北川が、向かい合って固まっている。

事情はわからない。でも簡単な状況だけはわかる。

北川と加奈が休日に二人きり――あれは、デートというのだ、世間では。

もし西村さんから「加奈ちゃんのデートを見に行く」とか最初に言われていたら、僕の腰は一発で重たくなっていただろう。

たしかに、西村さんと話をしたおかげで、自分の正直な気持ちを少しは整理できたと思う。

でもだからって、加奈と北川のデートを見に行くなんて……。

西村さんに見透かされていたというのは情けないが、こんなことに連れてこられるとわかっていたなら、全力で逃げていただろう。

理由なんて、曖昧だ。

ただとにかく、まだ、加奈に会うだけの準備ができてなかった。