「えっ、紳…どこ行くの?」



俺に連れていかれていることに
やっと気づいた穂乃香が尋ねた
ところで俺は止まった。


振り返り見た穂乃香の顔は
火照っているのがわかるくらい
まだ熱を帯びていた。


そして、俺の目を見ようとしなかった。



「穂乃香…教育実習生って…」



「あぁ、うん…太一君だった」


やっぱり…
穂乃香はすでに太一兄に会っていた。



「帰って…きてたんだね、太一君。
急すぎて、びっくりしちゃった…」



太一兄に会った穂乃香が
動揺しているのは明らかだった。


穂乃香は昔からこういうとこは
素直に出るんだよな…



「あっ、でもね…」


穂乃香は俺に小さなふせんを渡した。