君に会ったのは、もう4月だと言うのに少し肌寒い春の日で。
今日から中学校だ、なんて隣で胸を踊らせている女子の横、
僕_八王子冬樹(ハチオウジ フユキ)は少し緊張していた。
「大丈夫、大丈夫。僕は大丈夫」
何度も何度も自分の心にそう言い聞かせた。
新入生代表挨拶なんて、柄じゃない。
でも、選ばれてしまったからにはやり遂げなければ、そんな思いにかられて。
「はあ……、」
小さく溜息を吐く。
文章を書いてきた紙、こんなものが役立つのだろうか。
そんな不安が立ち込めてきて。
「嗚呼、やっぱ、無理だってば」
そう思って、もう一度紙を見ようとした時、紙が強風によって飛ばされた。
そういえば、今日は春風が強いって天気予報で言ってたっけ。
ついてない。