…それにしても。
「西野くんは、やっぱり上手…」
西野くんが描いているのは、並木道。
道の両側に植えてある木々が紅葉していて、とっても綺麗。
「こんなに素敵な絵を汚しちゃって…」
あたしがこぼした水のせいで、はっきりと描いていたであろう枝や葉の色はにじみ、物の輪郭はぼやけ、全体的に赤っぽく染まっている。
すると西野くんは、あごに手を当てて何かを考え始めた。
「うーん…」
少ししてから、西野くんはポンと手を打った。
「なるほど。そうすれば…」
そう呟いて、あたしにほほえんだ。
「ありがとうございます、島崎さん。 おかげで良い作品ができそうです」
…戸惑うあたしを現実に引き戻したのは、6時間目終了のチャイムの音だった。