「美結、おつかれ」
文化祭の後かたづけの最中、松本くん―――優吾が、声をかけてきた。
「優吾も、おつかれ」
あたしは作業の手を休めずに答えた。
「……」
返事がない。
あれ、スネた…?
…そんなことより、
「ーっ、取れないっ」
壁に取り付けたアルミホイルの切れ端に、どうしても手が届かない。
―――すると、スッと横から手が伸びてきて、優吾がそれを取ってくれた。
「あ、ありが…」
お礼を言おうと優吾の方を向くと、コツン、と頭を叩かれた。
「痛ぁ…っ。 何すんのよ、もう!」
そう言うと、優吾は真面目な顔で言う。
「俺の話はちゃんと聞け」
「はいはい」
半分呆れながらそう言うと、
「返事は1回!!」
怒られた。
あたしは幼児じゃないよ、と思いつつ、
「はあーい」
そんな返事をしてみたりして。
…いつものように言い合っていると。
「お前ら、ほんと仲いいよな! お似合いって感じ? もう、付き合っちゃえば?」
クラスの男子に冷やかされる。
…あたしたちが付き合ってることを知ってる人はごくごく少数だから、実際の状況と人に言われる内容が食い違う。
そう思っていると、優吾は、やっぱり真顔で言った。
「わざわざアドバイスをどうも。 だけど、必要ねぇよ。 俺たち、もう付き合ってるから」
…一瞬の沈黙。
そして。
「ええええぇぇぇっ!!!」
男子の歓声と女子の悲鳴の中、あたしたちの文化祭は終わりを告げた。