あたしはふと思いついて、クレープが入った袋を開けた。
袋から1つ取りだすと、慎重に2つに割る。
そして、きょとんとしている松本くんに、片方を手渡した。
「今日のお礼。 ―――って言っても、もらったものだけど」
あたしが言うと、松本くんはくすっと笑った。
「もらっとくよ」
偉そうに言い、クレープにかぶりついた松本くんは、
「…あ、確かに美味いな」
目を丸くして、そう呟いた。
「でしょー?」
あたしが言うと、頭を軽くこづかれた。
「クレープが美味いのは、お前の手柄じゃないだろ」
あたしは、松本くんを無視してクレープを口に入れた。
「うーん、やっぱり美味しいっ! クレープ最高!!」
叫ぶあたしを、松本くんはそっと見守るようにしていた。
呆れたように、でも、優しく微笑んで。
大好きな人と半分こしたクレープは、昼に食べたときよりも、ずっと…ずっと、甘かった。