撮影はどんどん進み、いよいよラストシーンを撮ることになった。
「このシーン撮ったらクランクアップだから! 一番の難関にして、一番の見せ場よっ」
 張りきる監督さんと、
「おう、任せとけって。 な、一宮?」
 余裕で答える新川くん。
 だけど…
「う…ん」
 だけどあたしには、そんな余裕はない。
 だって、これが終わったら。
 あたしたちは、ただのクラスメートに戻ってしまう。
 あたしと新川くんが「恋人」になることは、もうない。
 確かに今までのは全部演技だけど、でも…現実ではもちろん、演技でさえ、あたしたちが“両想い”になることなんて、もう…ありえないんだから。
 こんな気持ちを抱えたまま、いい演技なんてできっこないよ…。
 1人で沈み込むあたしに、優しい言葉をかけてくれたのは、
「一宮」
 他の誰でもない、
「大丈夫だって。 今まであんなに練習しただろ? 自信持てよ」
 ―――新川くん。
「うん…」
 …そうだよね。
 今さら、泣き言は言っていられない。
 しっかりやらなきゃ。