*主役はアイツ。*



「映画撮ろうぜ、映画!」
 新川くんがそう言ったのは、HRの時間。
 テーマは、『文化祭について』。
 この3年A組で何をするか決めるため、文化祭委員のあたし、一宮楓がみんなに意見を求めたときだった。
「いいんじゃない?」
「おもしろそうだし、やろうぜ」
 ざわつくみんなに、あたしは声を張り上げた。
「“映画を撮る”という案に賛成の人は挙手!!」
 挙手したのは、全員。
「じゃあ、これで決定します」
「お―!!」
 …うちのクラスは、良くも悪くもノリがいい。
「じゃ、ここからの進行は、発案者の新川くんにお任せします」
 半ばヤケになったあたしは、新川くんに無理やりバトンタッチ。
「え―、俺?」
 声を上げた新川くんに、あたしはニコッと微笑んだ。
「うん。 よろしく」
 新川くんが何か言う前に、あたしは席に戻った。
 新川くん―――新川和弥くん。
 イケメンで、何でもソツなくこなす、モテ男くん。
 彼に任せておけば、みんなまとまるから、あたしも安心。
 先生も、一目置いている。