「わぁ…」
とても、幻想的な絵だった。
その絵の空は、真っ赤な夕焼け。
街灯が点々と灯り始めている。
にじんだ色はそのままに、上からもう一度木々が描かれている。まるで、水で薄めた水彩絵の具で、初めから淡く描いていたかのよう。
“偶然”としか言いようのない、あたしが起こした事故を、まるで初めから計算していたかのよう。
すべてが、完璧に生かされている。
「綺麗…」
あたしがそうつぶやくと、西野くんはついと目をそらした。
そして、夕陽が差しこむ窓辺に歩み寄り、眩しそうに目を細めながら、言った。
「今回の作品は、いつも以上に良い仕上がりになりました。 ……好きな人に、手を加えてもらいましたから」