目を逸らすことが、
見てしまったことを
証明すると知りながら
逸らさずにはいられなかった。


彼は携帯を操作して、
亀城託実の名前を私に見せる。



「これが誰かわかっちゃったんだね」


彼の問いに、
私は静かに頷いた。


彼はそのまま電話を手にして、
先程名前を表示させてた、
託実のところに
目の前で電話をかける。



それが彼が
Ansyalの
メンバーだという
紛れもない真実だった。


電話の向こうからは、
託実の声が
携帯電話越しに漏れてきこえる。


その託実さんに向かって、
彼は約束の時間に
少し遅れることを伝えた。





あまりの出来事に
私は、頭の中が真っ白で
その場から
動くことすらできなかった。




「唯ちゃん。
 託実さんには許可貰った。

 唯ちゃんには話がある。

 ちょっとついてきて
 欲しいところがあるんだ」


彼はそう言うと、
私の手を掴んで音楽室を出ていく。


職員室によって、
鞄を手にして
退勤手続きをとった後、
彼に手を惹かれるままに、
あの病院へと連れて行かれる。




「ここって確か、
 宮向井君のお兄さんが
 入院してるんじゃなかった?」


私は思わず、彼に声をかける。



彼が私を此処に
連れてきたってことは
Takaは彼ではなくて
……お兄さんなの?