「ただ唯ちゃん。

 これさー、
 うちの連中、
 こなせると思う?」


その問いかけに
私思わず、口を紡ぐ。



「ハードル
 高いかも知れないわね」

「やっぱり?」


宮向井くんの表情が少し
陰って、鍵盤を見つめ続ける。


「ちょっといい?」


宮向井くんが
先程演奏していた変奏の一部を
ピアノで紡ぎつつ


「この当たりとかは、
 イメージを崩さないで
 少し音数を抜いて、
 こういう風にしてみたらどうかしら?」っと


その場でアレンジしていく。


そのアレンジを引き継いで、
彼も次から次へとイメージをそのままに、
少しでもクラスで
弾きやすいように、
音をまとめていく。 


音楽で寄り添う時間は、
とても早くお昼も食べそこねて、
ピアノを弾き続けた
私たち二人が気がついた時には
すでに午後三時を回ろうとしていた。



「出来たー」


彼が喜びながら叫ぶ。


その声は、
シーンと静まり返った
音楽室に響き渡る。