☆ 冬の風が 明乃の体を通り過ぎてゆく 冷たくひんやりとした風も この日は心までも凍てつくさなかった―― 体育で長距離をしていたとき―― 足の遅い明乃を抜いて行く田口の背中から 目が離せなかった “まだこんなにも 田口のことが…” 涙で滲む視界 それを左手で グイッとふき取った 気を取り直して 明乃も懸命に走った 少しでも長く 田口の背中を見つめていたかったから…――