冬の風が 明乃の体を通り過ぎてゆく





冷たくひんやりとした風も この日は心までも凍てつくさなかった――



体育で長距離をしていたとき――

足の遅い明乃を抜いて行く田口の背中から 目が離せなかった




“まだこんなにも 田口のことが…”



涙で滲む視界






それを左手で グイッとふき取った


気を取り直して 明乃も懸命に走った





少しでも長く 田口の背中を見つめていたかったから…――