「そっか、伝えたんだー…」


家に帰った直後 涙をこぼしながら下校をしたことを電話で棗に伝えた

白い子機から伝わる 棗の声が明乃の耳もとに響いてゆく



『うん…。“うちは田口が好き”って伝えたら…、誤ってくれた…。それに、“うちは別に独占欲はないから、好きって思うのは、明乃の自由だよ”って…』


「うゎぁ…。もっちぃ…優しー…」




本当に透里の優しさなのだろうか?

ただ 明乃に対する同情とかじゃないのだろうか?


どっちにしろ 明乃の気持ちは変わらない




ちゃんと透里に自分の思いを告げた





後は 田口に誤るだけ――

これが1番辛いけど 前に進まなきゃダメだと思う



『明日こそ…、田口に誤らなきゃ…』

「そうだね。明乃、頑張って!」





電話中に部屋のカーテンを開けた明乃


冬だと言うのに そこまで輝いていない星屑達――



『うん…、わかった。おやすみー…』






子機からもれる 電話が切れたときの音


その音が部屋に鳴り響く――

窓には無数の水滴――








明乃はそこに 相合傘を描いた



『…』



左側には明乃の名前を――

右側には田口の名前を――



窓に描かれた相合傘を眺めているうちに 胸が締め付けられる自分がいた――







その相合傘に手をそえて ずれ落ちる明乃――


『――…田口…』











今まで ミスチルの他愛のない会話で笑いあったり 貶しあったりしていたのに

今では 遠くに行ってしまった――

姿が見えないくらい 遠くに

あんなに近くだったのにね…――


もう あの大きく骨ばった手で 差し伸べてくれないんだね







私は 1人で立ち上がらなきゃいけないんだね