いや、しかしながら…
人間というものは失うことや別れを惜しみ、それらを神のせいにすることもしばしばある

それは自然の成り立ちに反してはいないだろうか?

桜…
桜もまた、時に身を任せ種族繁栄に徹している

花が咲き、時として一瞬に舞い散る

だが、花びらを失うことに彼らは文句を言わない

それは何故か?

花びらを失うことによって彼らは
新しい……利益、言わば“幸せ”を得るからだ

桜にとっての“幸せ”とは
まぎれもなく、種を得られることだ

花があるうちは種はない

それが彼らにはよくわかっている

私たち人間も失うもののかわりに“幸せ”を得てはいないか?

死者との別れは
新しい命との出逢い


なくしものの果てにあるのは
決して喪失感、空虚感だけではないと思う