「妃芽っ、お前なにやってんだよ?んなとこで立ち止まったら危ねえだろ?」



俯いたまま顔を上げることが出来ない。



少しでも動くと、涙が流れ落ちてしまいそうだった。



リュウの影を見つめながら、必死に涙を呑み込む。



「とりあえず、車戻るぞ」



腕が伸びて来るのが、影の動きを見ていてわかった。



「いやっ、触らないで‼」



とっさに一歩後ずさる。



こんな気持ちのまま、あの車内の空気に耐えられる自信がない。



醜い感情が溢れ出して、ひどいことを言ってしまいそうだった。



今度突き放されたら、それこそ立ち直れない。



これ以上、傷付きたくなかった。