「ドレスが似合い過ぎてて……ドキドキしまくってやべぇんだよ」
えっ⁉
「なっ……」
気まずそうに目を泳がせながら頬を掻くリュウの顔は真っ赤だった。
その一言であたしの中のドキドキも一気にヒートアップして行く。
普段あたしがドキドキさせられることの方が多いから、リュウのこんな姿ってかなりレアもの。
だけどあたしの顔もかなり真っ赤。
「あんまそんな顔で見つめんなって。それと……」
耳元に唇を寄せてリュウが小声で囁く。
「他の男見るのも禁止」
相変わらず独占欲が強くてわがままで。
「バージンロードは────」
イタズラっぽい声を出しているけど、どことなく真剣なリュウの姿にドキドキが止まらない。
「俺だけを見てまっすぐ歩いて来いよ」
【fin】
続編いかがでしたでしょうか?
次のページからはおまけページになります(^^)
結婚後の2人の生活を覗いてみて下さいね(^^)
「あ、おかえりー」
すっかり日が暮れた寒い冬の日。
スーツに身を包んだリュウが体を震わせながら帰宅した。
「外やべぇ、マジ寒い」
鼻の頭を真っ赤にさせて、温もりを求めるようにあたしを背後から抱き締めて来る。
「リュウは本当に寒がりだね」
冷たくなったリュウの手にそっと自分の手を重ねる。
すると、今度はその手をリュウが握り返してくれた。
「妃芽の手……いつもあったかいからホッとする」
「でしょ?あたし、体温高いんだ」
「ぷ。子どもみてぇだな」
こ、子ども……。
「あたしってそんなにガキっぽいかな」
童顔なのは仕方ないとしても、それ以外のところでは大人っぽく見えるように頑張ってるのに。
鏡の中の自分を見ながら、軽いため息を吐き出す。
4個も離れているからか、リュウはあたしのことを子ども扱いしてばかり。
大人っぽくて色気がある女性になれたら、少しはリュウに近付ける気がするのに。
せめて格好だけでも釣り合うようになりたい。
もう少し背が高かったら、大人っぽい格好も似合っていたかもしれないのにな。
リュウの好みって聞いたことがないけど、絶対大人っぽい方がいいに決まってるよね。
それはあたしの願望でもあるわけだけど。
ガキっぽいから大人な女性に憧れる。
「鏡と睨めっこしてなにしてんだよ?」
「え⁉あ……」
いけない、あたしったら。
またボーッとしてた。
「どうやったらリュウに釣り合うかって考えてたの」
さっきガキだって言われたしね。
軽く睨み付けたけど、リュウは全く気にする素振りを見せない。
「はぁ⁉そんなの考えるだけムダだろ」
挙句の果てには、あたしの努力を打ち消すような発言までしてみせた。
それはいくらなんでもひどすぎじゃないですか?
「そんな言い方しなくてもいいじゃん」
もういいよ。
リュウにはあたしの悩みなんてわかるわけないんだ。
完璧なリュウに凡人のあたしの悩みなんてね。
「待てよ」
洗面所から出て行こうとしたあたしの腕を、リュウがすかさず掴んで引っ張る。
「勝手に自己完結すんな」
「えっ⁉だって……ムダだって……」
そう言ったじゃん。
「そういう意味で言ったんじゃねぇよ」
ますますわけがわからなくて、あたしはリュウに向かって首を傾げた。
じゃあどういう意味なの?
「俺と釣り合うとか釣り合わないとか……んなの考えるだけムダって意味だよ。俺は妃芽が笑ってくれてたらそれでいい」
“だから余計なことばっか考えて暗い顔してんじゃねぇよ”
その言葉を聞いた時にはもう、リュウの腕に包まれていた。
〜ちっぽけな悩み事〜
【fin】
季節は巡って梅雨の時期がやって来た。
6月下旬。
「あーあー」
伝い歩きをするようになった結翔君を見て自然と顔が綻ぶ。
「やばーい、可愛い」
この前見た時はハイハイをしてたのに。
子どもの成長ってあっという間なんだね。
顔付きも前よりもっとはっきりして来た。
それにしても
小さい子って、どうしてこんなにムチムチしてるの?
汚れのない綺麗な瞳に、天使のように愛らしい笑顔。
そんな結翔君も、もうすぐ1歳になる。
「成長していくのを見てると幸せを感じるけど……なんせ子育ては大変だよ」
肩や腕をさすりながらユメさんが言う。
「体力がないと体が持たないしさ。それに見てよこの腕‼筋力がつきすぎて太くなっちゃったの」
「元が細いんだから、そんなに気にすることないよ」
今くらいがちょうどいい感じだし。