あたし──…最低だ。松澤を怒らせた。

松澤の事、信じてるのに。松澤の事、大好きなのに。


きっと松澤は ものすごい顔であたしを睨みつけてるだろう 。

そう思うと 、怖くて顔を上げる事なんて出来ない。


「五十嵐……顔上げろ」


「……」


「……五十嵐」


声からにして 、怒っているのがよく分かる。

これ以上 怒らせたくない。

だからあたしは、ゆっくりと顔をあげた。


「───え?」


気付くと、あたしの真横に松澤の顔があった。

しかも松澤の腕が肩と背中に回っていた。

あたし……、松澤に抱き締められている?


男の子に抱き締められるなんて初めてで、すごいドキドキした。


「……松澤…?」


「五十嵐、よく聞け」


松澤の声が聞こえる。
それに 、今までで一番近くに聞こえた。