本当はここに来ても話さないつまりだったんだけど、松澤の顔を見たらそんな事出来なかった。
「あたし……松澤の事好きだよ」
「……うん」
「だから、松澤もあたしの事好きって言ってくれて嬉しかったんだよ」
「……うん」
「でも、それは嘘なんでしょ……?」
「………はぁ?」
ずっと思っていた。
松澤は、本当はあたしの事好きじゃないって。
「だって……、本当に好きなら離れる必要ないよね?」
「……」
「しかも松澤……、廃松中行くんでしょ?」
「…あぁ」
「……─菜乃花ちゃん、もそこの中学校だよね」
そう。あたしが一番驚いたのは 松澤の行く中学校のこと。
────なんで、廃松中なの?
冷たい風が、あたし達の間を横切る。
それを、別れのサインと思えてしまう自分に腹立つ。
「やっぱり、菜乃花ちゃんが好きだったんだね」
「……違う」
「菜乃花ちゃんが行くって言ったから、松澤も廃松中に行くんでしょ?」
「……いがら」
「あたしの事好きって言ったのも、ただのノリで言っ」
「──っ。五十嵐!!」
松澤の怒鳴るような大きい声が耳の中に入ってくる。
思わず体がビクッと反応してしまう。