「その子のフルネームって?」

「やまがみ あかね」

「あかね…ちゃん…」

「どうせ、見つからない」

「苗字は分からないけど
『あかね』って名前の
女の子を俺は知ってるよ?」

「それを早く言え!!」


そして2人はダッシュで貴之を探し回った。

きっと、まだ校内にいるはず…!!



***


貴之は校内の渡り廊下を歩いていた。

もう夕方で太陽も傾いていた。

空はキレイな茜色に染まっている。

心が癒されていく。


偶然なのか必然なのか、今日に限って空に見とれてしまっていた。


ドンッ!!


誰かとぶつかったというよりは硬い物に当たった感触がした。

思わずつぶった目を開ける。


そこにはばらまかれたたくさんの資料の本。

そしてみつ編みにダサい眼鏡、ロングスカート。

そして目にかかるほどの前髪の女の子がいた。


「あの、大丈夫?」

「す、すみません」


その子は必死に重たい本を積み重ねていく。


「なんか、悪い…」


俺も床に散らばった、たくさんの本を拾っては積み重ねた。


「俺も運ぶの…」


俺の言葉を最後まで聞かないで、そのままその子は一度だけ頭を下げた後、去って行ってしまった。