「嘘だろ?」

「知らずに
『あかね』って名前だけで
過剰反応するしさ」

「…そんなにも
良い女なんだな」


陽平は妖しく笑った。


「確かに明るくて可愛くて。
いつも人に囲まれてる
人気者の女の子だったよ」

「そっか」


そしてもう一度軽くはにかむ。


「お前、勝手に狙うなよ。
お前の悪いクセだよ、本当に」

「そんなことしないよ。
俺が甘いマスクを
被っているだけだって」

「バカ。
女たらしの間違いだろ」


そして2人は部室を後にした。


「今でも貴之は
その子のこと探してんの?」

「分からない。
でも絶対に強がってる」


この前、その話を出した時に『諦めた』とか言っていた。


けれど似てる子を見たら目で追っていた。


それは今でも探してるって証拠だろう。


それにサッカーを今も一生懸命に続けていることは忘れられないからだ。


昔に彼女と約束したと言っていたから。



そういえば、この高校に来てからはいつも以上に必死になって探してた。


きっとこの学校にいるって言って。

この学校は彼女にとってきっと大切な場所だからって。


そんな小さな時にした約束なんて忘れているに決まっている。

何度も言ったけれど、約束したからと、貴之はゆずらなかったんだ。


でも、そんな名前の子は1人もいなかったんだ。