「それでもいいよ」


ただ、あたしはそこまで彼を否定する意味が分からないから、知りたいだけ。

美奈子は落としていた視線を上げ、納得がいかないその顔で軽く頷いた。


「…椎葉先輩は結構、女の人と遊んでるって言う噂。大企業の息子だから金に困ることはないから裏で色々やってるみたいだよ?」

「……」

「結構派手な事してて荒れてたみたいで、お母さんが居たんだけど、対立して先輩が殺したって、」

「…殺し、た?」

「あ、いや。詳しくは分かんない。そー言うのチラッと聞いたから」

「……」

「それから大変だったみたいだよ?今はお姉さんとお兄さんが継いでるってさ」

「…そう、なんだ」

「お兄さんとお姉さんは優秀なんだって。先輩だけ違う方向に進んじゃったみたいだけど…」

「……」

「でも、先輩と係わるのはよくない、と思う」


美奈子は少し言いにくそうに口を開いた。


それを聞いた後、美奈子と別れトボトボと足を進めて帰った。


係わらないほうがいい。

そう言った美奈子とアオ。

口を揃えるかのように同じ事を言った。


だけど、そんな事言われても無理でしょ?


ここにはもう来るなって事じゃん。


…そんなの、あたしは嫌。