「…若菜ちゃんっ、」


放課後。


弾ける声とともに目の前に現われたのは、美奈子。

そんな美奈子は未だ椅子に座っているあたしの顔を覗き込んだ。


「…え、なに?」

「どーしたの、若菜ちゃん?」

「あー…別に、」

「もしかして椎葉先輩の事?あたしが言ったから?」


美奈子は少しだけ表情を崩し曇らせる。


「…アオにも、同じ事言われた」


ポツンと呟いたあたしに、美奈子は一瞬目を泳がせ、


「そっか…」


小さく呟く。


「ねぇ、あの人の噂って何?」

「…噂?」

「そう。よくないって、言ってたから」


美奈子を見つめると、美奈子は眉を少し歪めた。


「若菜ちゃんって、ホントに知らないんだね」

「人に興味ないからね」

「そっか」

「だから知ってる範囲でいいから教えてよ」


そんなに言われると、気になるから。

1年前から存在だけ知ってんだよ?


だから、なんでか知んないけど、“はい、そうですか”だけでは終われそうにないの。