「…──若菜ちゃんっ、」


次の朝、教室に入るなり声を上げたのは美奈子だった。

目に映る美奈子は、焦った顔をしながらあたしの側まで駆け寄る。


「な、なに?」


グッと腕を掴まれたかと思うと、美奈子は廊下の隅まであたしを連れて来た。


「わ、若菜ちゃんっ!」


キョロキョロする美奈子に思わず溜め息が漏れる。


「だから何?」

「あ、あのね。昨日、若菜ちゃんが椎葉先輩と居る所見たんだけど!」


…え?

シイバ先輩?


「誰?…それ」

「誰って、この前…ママの店の前で会ったでしょ?あたしがぶつかった人。…椎葉 恭だよ」


…椎葉、恭。


「それが、何?」

「若菜ちゃん、椎葉先輩とどー言う関係?」

「どー言うって、別に何もないけど。って、言うか先輩って何?」

「え?」

「だから美奈子言ってんじゃん。椎葉先輩って」

「え?若菜ちゃん知らないの?椎葉先輩1コ上だよ?」


…1コ上?

そんな訳ないでしょ?