思わずため息を吐き捨ててしまった。

このまま帰ったって、家の中の想像が目につくだけ。


だからと言って、帰らない訳でもない。


少しでも、少しでも…

家の空間から避けたいだけ。


だけど、ちょっと気分が良かった。


今頃になると、物凄く空腹感が迫って来る。

だけど、今日に限ってそれはない。


一切れのサンドイッチを恭に貰って食べたから。

だから、今日と言う今日は空腹感で困ることはなかった。


トマトが嫌いだと言った恭に、思わず笑みが漏れる。


「…なんか、」


似合わない。

好き嫌いなさそうなのに…



恭が姿を消してからどれくらい時間が経ったのかも分からない。

だけで、よりいっそう暗くなった空を見て、カナリ居たと感じる。


一息吐いて、重い腰を上げたあたしはもう一度フェンスに掴まる。

さっきよりも一段と明るく輝く光に目を奪われる。


待ちの明かりが消える頃には、また次の朝を迎えるんだって、嫌でもそう思う様になった。


「…帰ろ、」


地面に置いていた鞄を掴んで、重い足取りを動かした。