「ちょっと、ごめん。担任に呼ばれてるから職員室に行って来る」
学校に来た時に出くわした担任に言われてた事を思い出し、美奈子に告げる。
「あ、うん」
ギィっと椅子の音を小さく立てて立ち上がるあたしを美奈子は見上げる。
そしてフゥーっと一息を吐き教室から出て向かおうとした時だった。
「ねぇ、蒼斗。今日どっか行かない?」
視界に入るのは今まさに来ただろうと言うアオの存在。
そのアオに嬉しそうに近づいてくるのは数人の女達。
…って言うか、来るの遅すぎ。
女が周りにいるのはいつもの事。
女に囲まれながらダルそうにあたしの前を通り過ぎて行くのも当たり前の事。
だって、学校では一言もアオとは話さないから。
目線だって合わせる事もなく、ただお互いが空気のような存在。
だから皆はあたしとアオの仲を知らない。
こーゆう風になったのも昔から。
だからと言って、あたしはこれが嫌だとは思わない。
むしろ、早くアオから離れないとって、そう思う。