これから仕事に向かうだろう母は派手な格好をして真っ赤な傘を開ける。


「アンタいい加減にしてよね。また帰ったって、学校から連絡あったわよ」

「……」


そう言ってどうしようもない感じであたしを見た。



「言いわけすら面倒くさいのに、迷惑かけないでよ。こっちは必死で働いてると言うのに」

「……」

「ちゃんとしてよ、ほんとに」


スッと顔を背けた母はここぞとばかりにため息を吐き出し、雨の中へと歩きだす。

その方向に視線を向けると、母が過ぎ去った横で恭がボンヤリと見てた。


その恭と一瞬目が合ってしまった。


だからあたしは避ける様に視線を前方に向け、駆け出す様に階段を上った。



ほんとに運が悪かったとしか言いようがない。


雨がきっかけで送ってくれた恭。

ほぼ会った事もない恭に、あんな母を見られるなんて最悪だ。


聞かれてた会話に何をどう思ったか知らないけど、嫌で、嫌で、仕方がなかった。