時折感じる周囲の視線。
この人のオーラなのか、女達の視線が恭に向かってた。
アオもそーだけど、でもまたちょっと違う空気。
晴れてたならきっと、あたしも恭もあのビルに居てるんだろうと思う。
「…あのっ、」
静かな空間だった。
バチバチと傘に打たれる雨音を耳に、あたしは空間を遮る。
「うん?」
そう言った恭はあたしを見下ろす事なくずっと前を向いてた。
「昨日はごめん…」
「昨日?」
「勝手にビルに上がり込んじゃって」
「別に。俺の場所でもねーし」
「それに…勝手にあの店に行ってゴメン。なんか、宜しくない感じだったから」
あの、女の人が。
多分、あたしの所為で攻め立てられるんだろうな。
…そんな予感。
「来なかったらスマホ返せてねーと思うんだけど。俺が持ってても仕方ねーし」
「…あぁ、うん」
…そうだけど。
小さく呟く声に紛れてバチバチと傘に弾く雨が、強かった。
隣を見ると、恭の左肩が濡れてて。
だから、あたしは咄嗟に恭が持ってる傘の手を少し左に押した。