見上げる先は透明の傘に弾く雨。
隣にはあの彼…
なんでこんな事になってんの、あたし。
これも雨の所為。
でも、やっぱり変な奴。
冷たいのか、優しいのか、どっちだか分んない。
「家、どこ?」
「え?」
「家」
「あー…少し距離あるから大通り右手のコンビニまででいい」
「どの辺?」
「並木通り…」
「俺もそっち」
「…そっか」
このなんとも言えない空気。
どうして今あたしは、この人と肩を並べて歩いてるんだろうと思う。
でも、何だか不思議だった。
美奈子と居る時に出会って、そしてビルの屋上で出会って、今日。
まだ数回しか会ってなくて、ほぼ初対面なのに何だか落ち着く。
フワフワとした空気のような存在の彼。
大人びた、クール感が余計にそうさせてんのか、嫌だ。…とは思わなかった。