「これから降りだすぞ」


ポツポツと地面に落ちて行く雨粒。

夕立か本降りか分かんないけど、今から凄く降ってきそうな予感。


見上げた空は青空一つなく真っ黒な雲で覆われてた。


「じゃあ、さよなら」

「傘は?」

「無いから急ぐ」

「ちょっと待て」

「なんで?待ってたら酷くなるでしょ?」


…雨が、雨が酷くなる。


「いいから」


そう言った恭はもう一度中に入り扉を閉める。

なんなの、ほんとに。


早くしてほしい。


暫く経って出て来た恭はビニールの傘をバッと頭上に広げた。


「入んねぇのかよ」

「…え?」

「帰るんじゃねぇの?」

「帰るけど…」

「だったら入れよ」

「一緒に?」

「これしかねぇし、俺も帰っから」

「あっ…」

「嫌なら濡れて帰れ」


スッとあたしに背を向けた恭。

次第に強くなる雨に―――…


「ま、待って!」


駆け足であたしはその傘に入った。