「じゃあ、それでいいです」
「でもー、用件によっては──…」
「おい、サラやめろって」
そう言って、女の言葉を遮ったのはまさしく恭と言う男。
制服じゃない私服の彼が目の前に立つと、サラと言う女の肩に手をやって軽く押した。
「なによ恭!知り合いな訳?」
「いいから向こう行ってろって」
そう言われたサラはフンっとそっぽを向き、この場を離れる。
だから。
「あ、あのっ―――…ちょっ、」
言いかけた瞬間、あたしの身体が外に押し出される。
バタンと扉を閉めた恭は、
「はいよ」
そう言ってポケットから取り出したあたしのスマホを差し出した。
「あっ、」
素早く手にしたスマホに安堵のため息が漏れる。
「忘れんなよ」
「だから探しに行ったの!でも、なくて…あそこに置いといてくれても良かったのに」
「そうしようと思ったけど、無くなったらそれこそヤバイんじゃねーの?」
「別に、必要ないし…」
「…にしても結構鳴ってたけど」
「もしかして出たの?」
「出る訳ねぇじゃん。うるさいから電源切った」
「あたしも掛けたのに…」
「そんなの知らねぇよ」
「…だよね。でも、ありがとう」
少し頭を下げたあたしは、クルッと来た方向に身体を向ける。
その瞬間、思わずため息を吐き捨てた。