階段を上って、部屋のドアを開けようとした瞬間、変な違和感を感じた。
秘かに聞こえる女の声。
でも、それは普通に話してる声じゃなくて、喘いでる声。
それに混じって、“サエコ…”そう呼ぶ彼の声を耳にした。
血の気がサーっと流れた感覚に襲われた。
…サエコ?
“…あっ、ダメっ、だよ”
“そう言いながら気持ちがってるだろ”
″気持ちいいよ。イキそう…″
″あー…俺もイキそう″
荒れた息と聞こえる意味の分からない会話。
“もっと奥まで、…お願い。好きだよ”
震える手で、ドアノブを握った。
どうしてこの時、開けちゃったんだろうと、自分を責めた。
微かに開いたドアの隙間から、サエコの喘ぎ声に混じって、彼は息を荒くしてた。
そう、サエコの上で懸命に腰を振ってる彼を見た。
…なに、してんの?
まで言う必要がなかった。
あまりの衝撃で持っていた鞄を落としてしまったから。
その所為で、彼はあたしに気付いた。
「…若菜?」
そう言って曇らせていく表情。
まるで、少し焦っているようなその彼の顔が最低だと思った。
でも、それ以上にサエコはもっとヒドイ奴だった。