不意に走った涙がまた頬を伝った。
ただ切なかった。
なんで恭はあたしにキスなんかしたのかって。
成り行きだって、分かってても、切ないんだよ。
…好きだから。
「てか、俺だって誰とでも出来ねーよ。他の女だって俺から誘ってねーし」
「じゃ誘ったら出来るんだよね?今、あたしが抱いて欲しいって言ったら抱いてくれる?」
何言ってるんだと自分にでも分かった。
でも他の女達は恭にそうやって、誘ってたんだよね。
そして、それを受け入れてたんだよね。
だったら、あたしも。
なのに、
「ごめん、若菜とは無理」
微かに聞こえた恭の声に瞼が一瞬落ちてしまった。
あたしとは無理って、なに?
じゃあ他の女となら出来るんだ、そー言う事。
簡単に出来ちゃうんだ…
「…そっか」
何故か悲しく笑って呟いてしまった。
それと同時に、この場を早く抜け出さなくちゃと言う思いが強くなる。
鞄を肩に掛け、立ち上がると、
「送るから」
その恭の言葉に何故か苛立つ。
苛々して、苛々して。
感情が、言う事を聞かなくなってた。
「だから、そー言う優しさやめてよ。マジで困る!忘れたくても忘れられなくなるからっ、」
「……」
「だから、もう。…お願いだから、やめてよ」
潤んだ瞳で必死に言葉を吐き捨てると、あたしはそのまま恭に背を向けた。