あぁ、何処だろココは。

暫くして足を進めたのはいいものの、結局ココが何処なのかも分からなかった。

初めて歩く道。


ネオンが輝き都心のビルが高々と並ぶこの街に圧倒される。

こんな時間だと言うのに、溢れかえる人ごみに息さえ忘れそうになった。

とりあえず駅を探して、とりあえず家まで帰らなくちゃって事しか考えてなくて。


人の流れに酔いそうになりながら足を進めてた時。


「…え、若菜?」


不意に聞こえた声に視線を送った瞬間、冷や汗が滲んだ。


「レオ…」

「何やってんの、こんな所で」

「別に」


会いたくない人に会ってしまった。

見たくもない人に会ってしまった。


「丁度良かった。考えてくれた?」

「え?」


…何を?


「俺ともう一度やり直さないかって、」


どこまでレオはしつこいのだろうと思った。

喧嘩別れとか訳のわからない事を言っときながら、自分の犯した罪を白紙にする神経がよく分かんなかった。


「あたし言わなかったっけ?レオとは無理って」

「だから何で無理なわけ?俺はまだ若菜の事、好きだけど」

「好きって簡単に言わないでよ。裏切ったのレオのほうじゃん」

「裏切ったって、何が?」

「何って、そんなの分かってんでしょ?レオはサエコと…」


そこまで言って、口を紡ぐ。

それ以上言うと、自分が悲しくなるだけだと思ったから。

なのに。