「…若菜、」

「……」


暫くして恭の沈んだ声が聞こえた。

だけど、顏も上げることすら出来ずずっと伏せるあたしの頭を恭はゆっくりと撫ぜる。

そして。


「ごめん」

「……」

ポツリと聞こえた声にまた涙が溢れた。


「若菜とはそー言う関係になりたくねーの」

「……」


分かってた。

分かってた。

そう言われるって分かってた。


だけど、実際言われると苦しくて悲しくて切ない。


千沙さんが言ってた事を思い出した。

恭は誰とも付き合わないって。


だから分かってた。


「…だよね。ごめんね」


涙を拭いながら顔を上げた。

そのまま恭の顔を見ずに鞄を掴む。


「若菜っ、」


恭の声を耳にしてすぐ、あたしは部屋を飛び出した。

何やってんだろ、あたし。


見上げる空は星もなければ雲一つなく、その空に向かって一息はく。

目を瞑ったまま、ただただ流れてくる涙を拭く事も出来ず流し続けてた。