「ねぇ、恭は寂しくないの?」
不意に呟いた声に恭は「うん?」と言って視線をあたしに向ける。
「ほら前にあたしに聞いてきたでしょ?寂しくねぇの?って、だから恭はどうなのかなって」
本当は寂しくて仕方なかった。
あの時は一人の方が楽って言ったけど、本当は寂しかった。
そう言ったのも、一人で居た方が係わりを持たなくていいから。
裏切られる事も見離される事もないから。
でもその分、心は寂しかった。
だから恭は?
「…寂しいなんて思った事ねぇよ」
…嘘つき。
ポロリと心のなかで言葉が漏れる。
「…なんで?」
「これがあたり前だったから」
そう答えてくる恭に、何故かあたしが悲しくなった。
“あたり前だったから”
当たり前だったら感情すらなくなるのだろうか。
いや、違う。
あたしは、その当たり前の生活が嫌で嫌で仕方なかったのに…