「なんか面倒くせー事に巻き込んで悪かった。結局何もなってねーわ…」
「ううん。でも恭はスッキリしたんじゃないの?」
「スッキリねぇ…そうでもねぇけど。俺より、お前に嫌な思いさせたっつーほうが心残りで結局何しに行ったのかわかんねぇや」
「あぁ…あたしは平気。それに…」
「それに?」
「うん、それに…お父さんに失礼な事言っちゃったし、それこそ心残り」
「別にいいんじゃね?知らねーよ、アイツらの事なんか」
「でも…」
恭のお母さんに謝ったものの、やっぱりあんな態度をとってしまった事が今更ながらに、申し訳なく思う。
「つか、もう気にすんなって」
そう言った恭だけど、その横顔は切なそうだった。
そのまま着いた場所は恭のマンションだった。
とりあえず制服に着替えた後、ガラス張りの窓から夜景をボンヤリと眺めてた。
明かりがポツポツとまばらに光り出す。
ここから見る景色は本当に綺麗で、嫌な事も何もかも忘れてしまいそうになる。
ソファーに横たわっている恭は今、何を思ってるんだろうか。
人の心なんて正直分かんない。
聞いたとしても、伝えても、伝えられても、本心なんて分んない。
でも、この人の事を深く知りたいと思ってしまったのは本心だから。