「なぁ…」


ポツリと呟かれた恭の声に耳を傾ける。


「うん?」

「若菜の力を貸して」

「…え?」

「明日の18時。麗美さんの店に来て」

「麗美さん?」

「あぁ」

「どしたの?」

「ただ若菜の力を借りたい。俺を助けると思って…」

「……」

「その代わりお前の望み聞いてやるから」

「……」



何も言わずにただ、頷いてしまった。

内容なんて全く聞いていないのに頷いてしまった。


あたしの望みを聞いてほしいからじゃなくて。

ただ、その恭の意味ありげな言葉に頷くしかなかったんだ。



「…そろそろ帰るぞ」


暫く経って恭の言葉でコクリと頷く。

自転車に跨った恭の後ろに遠慮なく座り、恭の服をギュッと握りしめた。


坂を下って、流れる景色に目を奪われた。

キラキラと光る街並みが流れてゆく。


「…綺麗だね」

「だろ?だから自転車がいいんだって」

「なるほど」


風に靡かれながら空を仰ぐ。

星がいつもより綺麗だった。



周りが真っ暗になると見えるものが見える。

その意味って、ここの事?

それとも恭の心ん中なの?