“こーやって空を見上げんのも悪くねーな、と思って”
“暗くなったらここじゃ見えない星が、丘に行ったら見えんの”
“それって凄くね?”
“周りが真っ暗になると、見えるものが見える。少しでも邪魔な明かりがあると狂わせんだよ”
ふと思い出した恭の言葉。
今、恭は何を考えてる?
何を思ってる?
「…未来が見えればいいって思った事ある?」
静まり返った空間に、あたしは小さく口を開いた。
「ねーよ…。お前はそう思ってんの?」
「昔っからそう思ってた。この先が怖くて明日は何が起こるんだろうって、そんな事ばかり気にして。だから先が分かればいいって、ずっと思う」
「つか、それこそ怖ぇーだろ」
「なんで?」
「そんなくっきり分かると余計に怖いだろ。嫌な事も全部分かっちまうと、明日なんて過ごせない」
「…そっか。そうだよね」
「だから未来の妄想はすっけど」
そう言った恭は薄ら笑みを漏らす。
「妄想?」
「こーなったら、あーなったらいいな、とは思う。でも所詮は妄想にしか過ぎない、世の中そんな甘くはねーって事」
「…そだね」
呟くさきに見える恭の横顔が何だか悲しそうで、千沙さんが言ってた言葉が頭を過る。
“寂しんだよ”そう言った千沙さんの言葉が自棄に浮かんで仕方なかった。