それにしても変わった奴。

美奈子が言ってた通り、雰囲気が違うんだよね、他と。


“お前に関係ねぇだろ”

確かにそうだ。

見ず知らずの女に言う事じゃない。

そして、あの冷たそうな瞳。


何かこの1年間、彼を気にして無駄だった様な気がする。


多分きっと、係わる事も、あたしがあのビルから彼を眺める事はないだろう。


「…冷たい奴」


それにしても頭が痛い。

寝不足だろうか。

食べてない所為でもあるのか。


マンションに着いた頃には完全に辺りは真っ暗で、どれくらい時間を掛けて歩いたのかも分からない。

思った通り家の中はビールの空き缶が散乱してて灰皿からタバコが溢れる。


「…もういい加減にしてよ」


誰もないリビングに小さくあたしの声が漏れた。

ある程度片付けたあたしは冷蔵庫から水のペットボトルを出し、空腹を満たす様にガブガブと飲み干す。


この家に帰ると食べる気さえ失せる。


美奈子んちなら温かい料理が沢山あって、仲良く食べてんだろうな。って、そんなどうでもいい事まで考えてしまった。


…もう、寝よ。