再び車内は静まり返った。

お互い何も話す事なく、窓の外を見つめる。


次第に降っていた強い雨も小降りになり、なり続けていた雷もおさまっていた。

雨の音が静かになると余計に車内が静かな空間になる。


この空間の居心地を悪く思っていたあたしは小さく口を開いた。


「…もう、帰るね。ありがとう」


ドアに手を掛け、開けようとした瞬間、不意に聞こえた声に手を止めた。


「あのさ、」

「え?」

「千沙の病院、誰に教えてもらった?」

「え…セナさんだけど」

「やっぱり…」

「……」

「つか、もう俺と会わないほうがいい」

「…え?」

「俺と居るとロクな事ねーからな」

「……」

「俺と居たら最後に泣くのはアンタだから」

「どー言う意味か分んない」

「そのまんま…」

「……」


低く呟かれたその言葉の意味が何もかも分かんなかった。

目尻がジュわっと熱くなる。


その涙が溢れる前にあたしは何も言わずに車から降りた。