「あ…」
「……」
「ごめんなさい…。叩いた事」
何から言えばいいのか分からなく、少しの沈黙後に出て来た言葉がそれだった。
「…別に。俺も悪いし」
「ううん」
「ごめん」
「ううん」
俯いたまま首を横に振る。
たったそれだけで目が潤んでくる。
「それだけは謝ろうと思ってた」
「あたしも悪いから。恭は悪くないよ。…恭は悪い人じゃないから」
そう言った瞬間、何故か恭は情けなく笑った。
「つか、お前が思ってる程いい奴じゃねーんだけど。いい所ばっか見つけようとすんなよ」
「……」
「俺ほど、どーしようもねー奴なんて、いねーよ」
「なんで…なんでそんな事言うの?なんで恭は自分を見下すの?」
「じゃ、お前はどーなの?人の事、言えんの?」
「あたしは…」
合ってるからこそ何も言えなくて口を閉ざしてしまった。
「ま、別に言わなくていいけど。でも、あまり俺の事、信用すんな」
「……」
「で、お前は何であそこに居た?」
聞かれる事はなんとなく分かってた。
あたしがあの場所に居るのはおかしな事で。
それ以上の事を問い詰められるのが、怖かった。