気づけば病室を出てた。

何が何だか訳分からないまま病室を出てた。


でも、そこにはさっきまでいた恭の姿なんてどこにもない。

むしろ、あの態度からして、あたしと係わりたくないオーラが物凄く伝わる。


セナさんと一緒になって、恭を振り向かせる事をしたのが今ではなんの意味もない。

考えて見ればあれはいったいなんの為にしたんだろうと、思う。


やっぱし別になんも変わんない…


病室を出てしまったから、もう帰るしかない。

千沙さんの事、もっと聞こうと思ってたのに、まんまと追い出されたようにも思う。


はぁ…と小さくため息をつき、出入り口を出た瞬間、


「…遅い」


不機嫌とも言える声が聞こえ、思わず下げていた顔をバッと上げた。


「え、帰ったんじゃないの?」


備え付けてある灰皿に、恭はさっきまで吸っていたタバコを押し潰す。


「帰ろうと思った。でも…」


恭が視線を送る先。

その先を見つめると、ポツポツと降りだした雨に目を顰めた。


「雨…」

「別に濡れて帰ろうと思えば勝手に帰れ」

「……」


やっぱ恭は冷たい。

だからと言って、別に乗せて帰ってもらおうなんて思ってないし。