「天気予報で言ってたの。午後から天気の急変に気を付けて下さいって!だから――…」

「大丈夫です!!あたしタクシーで帰るんで!」


思わず、そう叫んでしまった。


「つかタクシー代勿体ないじゃん。恭だったらタダでしょ」


なんて、千沙さんはニコっと微笑む。

きっと千沙さんは分かっていたんだろう。


あたしと恭がギクシャクしている事を。

だから、そんな事…


「でも…」

「ね、恭いいでしょ?天気予報で言ってたよ、雷雨って」

「お前…俺を使うのもいい加減にしろよ」

「今は使ってないよ。だって若菜ちゃんかわいそうじゃん」

「…は?意味分かんね」


冷たく言い放った恭は背を向けて足を進めて行く。

そして病室を出た瞬間、


「若菜ちゃん、早く着いて行って」


なんてお節介にも程があるお言葉を千沙さんは出した。


「えっ、いや、あたしホントに…」

「何言ってんの!ホントに物凄い雨降ってくるよ?」

「いや、だからって一緒には帰れないです…」

「何?あたしには散々言いに来たくせに、あたしの事は聞けないの?」

「え、いや。そー言うんじゃ…」

「だったら早く!またね!」


そう言いながらグイっと千沙さんが背中を押した。